矢口高雄『羆風』がkindle unlimited で公開中!

矢口高雄『羆風』が Amazon.co.jp の kindle unlimited で公開中です。

ちなみに kindle unlimited とは 通販でおなじみの アマゾン のサービスで月額980円で200万冊以上の本が読み放題というサービスで矢口高雄の著作もいろいろと公開されています。また、Amazonプライム会員(月額500円)の人も特典のひとつとしてPrime Readingで800冊以上が読み放題となっており、今回、『羆風』はどちらでも読むことが出来ますので、もし、すでに Amazon プライム会員でしたら無料で kindle タブレットはもちろん、スマホ(iPhone / Android)、タブレット(iPad、Android)、パソコン(Windows、Mac)を使って読むことが出来ます。

ただ、『羆風』は非常に読み応えがある作品ですのでぜひ文庫本でお手元に置いておいていただきたいです。

『羆風』はご存知の方も多いと思いますが、1915年(大正4年) 12月9日から12月14日にかけて、北海道苫前郡苫前村三毛別で発生した日本史上最悪の熊害、「三毛別羆事件」を題材としています。戸川幸夫先生の『羆風』の初出は『小説新潮』昭和40年8月特大号掲載の50ページほどの短編でした。こちらは現在短編集『虎は語らず』に収録されています。

この小説は木村盛武先生が旭川営林局誌『寒帯林』に発表した『獣害史最大の惨劇苫前羆事件』が元となっていて、この『獣害史最大の惨劇苫前羆事件』が他の「三毛別羆事件」関連作品の原典となっています。こちらは『慟哭の谷―The devil’s valle』として纏められています。

そして昭和52年、吉村昭先生が『獣害史最大の惨劇苫前羆事件』を再構築して作品にしたのが『羆嵐』です。

『羆嵐』は当時たいへん話題になったようで、テレビドラマ(マタギの山岡銀四郎役は三國連太郎!)やラジオドラマ(倉本聰先生脚本! マタギの山岡銀四郎役は高倉健!)、演劇にもなったそうです。

ニコニコ動画

ラジオドラマ「羆嵐」 [ラジオ] 再うp兼うpテスト。大正時代、北海道で起こった最悪の獣害事件「三毛別羆事件」を題材にし…

実は『釣りキチ三平』にもこの事件に影響を受けたと思われるエピソードがあります。56巻ということでちょっと後ろの方なので読んでいない方が多いのかもしれないのですが、あの阿仁の三四郎と三平くんとの夢の競演ですので是非読んでいただきたいです!

『釣りキチ三平』っぽくないセリフ。
 

その後も、この物語は矢口高雄の『新・おらが村』(1988年-1990年) のエピソードで語られたり、隔週刊誌「チャンピオンジャック」に『慟哭の谷』(作:木村盛武、絵:本庄敦)が1995年19号から1996年5号まで連載されていました。(← 残念ながら未読) ちなみに『新・おらが村』も kindle unlimited で読むことができます。

そして、『野性伝説 羆風』(作:戸川幸夫、絵:矢口高雄) ですが、 『新・おらが村』が縁で苫前村の平田日出夫氏から資料を頂いたり、前述の木村盛武先生とやり取りを通して(妻・勝美曰く昼夜を問わず何十回もしていたとのことでした)。その結果、「矢口版・戸川文学」としての『羆風』が完成したのです。

後日談になるのですが、矢口はヤマケイ文庫版『野性伝説 羆風』を発売するにあたり、もう一度、読み直したところ思ったより残酷描写がリアルだった為、「気分が悪くなった、吐きそうになった」と言ってました。また、某テレビ局で「三毛別羆事件」の特集番組を制作するときに『野性伝説 羆風』の画を使用させて欲しいとの連絡があり許諾したところ、あまりにも描写が残酷なために使用出来ないということになり、矢口の画は使用されず、紙芝居みたいな絵になってました。

「三毛別羆事件」をもとに映画化されたものもあります、真田広之さん主役の『リメインズ 美しき勇者たち』。

また、「三毛別羆事件」とは直接関係ないのですが羆が主役の『マタギ』には矢口も出演しています。

ちなみに矢口は同じマタギを題材にした映画『イタズ』にも出演しています。こちらはかなり長いセリフがありました。

蛇足になってしまうのですが、戸川幸夫先生には『ゴースト&ダークネス』という映画にもなっているほど有名なウガンダ鉄道敷設工事中28名の労働者が犠牲になった人喰いライオンの話を小説にした『人喰鉄道』という作品もあってこちらも面白いです。こちらも漫画化されていて石川球太先生が画を描いています。

石川球太先生と言えば傑作『巨人獣』が有名ですね。こちらも kindle unlimited で読むことができます。読者にとっては良い時代ですね。

戸川幸夫先生の作品では『狼の碑 エゾオオカミ絶滅記』も漫画化されています。

他にもヒグマを題材にしたコミックで思い出すのが、三枝義浩 先生の『キムンカムイ』。

大人気の野田サトル先生の『ゴールデンカムイ』がありますね。『ゴールデンカムイ』を読んだことのある人は知っているかもしれませんが、最初、アイヌのアシㇼパが味噌をうんこだといって嫌うのですが同じ理由で矢口も味噌が嫌いでした。

話はころっと変わりますが「三毛別羆事件」以外にも熊による大きな被害が日本各所で起きており、検証のための書籍が出版されています。1970年の「福岡大ワンゲル部ヒグマ襲撃事件」はとても恐ろしいですね。羽根田治先生の『人を襲うクマ』に詳しいです。

また、2016年に秋田県鹿角市で起きた「十和利山熊襲撃事件」も恐ろしいです。こちらは米田一彦先生の『ひとがり熊』に詳しいです。

読売新聞オンライン

秋田県鹿角市の山林で、タケノコ採りの男女4人が相次いでツキノワグマに襲われ、死亡した衝撃的な事件から間もなく1年になる。…

このように獣害はこれからも増えていくと思われますが、矢口の視点が再注目される日が来るかもしれませんね。

話は変わりますが、今から6年前、矢口の生家を訪れました。

冬になると屋根のところまで雪が積もるそうです…
玄関の脇には高雄少年の部屋への階段が。
高雄少年の部屋。
この机で一生懸命漫画を描いていたのでしょう。
居間には囲炉裏が。たくさん絵や色紙が飾ってあります。
この色紙は凄いぞ。

『羆風』の大ファンの私は無理を言って頂いてしまいました。そして、この矢口の生家ですが5年前に取り壊されてしまい現在は更地となっております…。

この他にもニホンオオカミの話についても書きたかったのですがそれはまた今度の機会に。